読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

社内備品とうなぎパイ

アニメとか漫画とかゲームとか映画とか

ちなみに名前の由来はよくわからない

この度の盲導犬に関するニュースを聞いて昔のことをいろいろ思い出しましたのでここで書いておこうかと思います。


我が家で飼っていた猫はすげえデカくてちょっとした小型犬くらいだったら余裕で勝てるくらいの貫録があった。

まだあの国民的憂鬱系ライトノベルが世に出回る前のこと、キョンという名前を付けられたその猫は、9年前まで我が家にいて、心臓の病気で亡くなった。何歳だったのかはよくわからない。拾われた猫をもらってきたので、キョンが何歳だったのか、今までどこにいたのか、うちに来る前はどうやって生きていたのかよくわからない。

拾われた時からキョンは暴れまくっていた。おそらく野良だろう、というのが大人たちの見解だったし私もまあそうだろうなと思った。両手に収まるくらい小さかったキョンはビャービャー鳴きながらマンションの管理人室を駆け回っていて、これくらい元気な猫が家の中にいれば家の中も明るくなるんじゃないか、と思わされた。

実際はかなり大変で、キョンは元野良猫のせいか外にめちゃくちゃ出たがりだった。顔立ちの整ったきれいな猫だったし、猫には珍しく構ってもらいたがりで人懐っこい性格だったこともあってか、人が出かける隙を狙って家を抜け出し、マンションの庭で大の字で寝ていたり、住人から餌をもらったり、よそのうちに上がってくつろいでいたこともあった。朝家を出て、昼は外で遊んで、夜になると帰ってくるという夏休みの小学生のような生活をキョンは送っていた。外は危ないということをわかっていたのかは知らないけれど、少なくとも私の知っている限りマンションの敷地外には出ていなかったし、(何回か敷地外に出してみようと試みたことがあるんだけれど、その都度ものすごいスピードで敷地内に戻ってしまった)あんまりよくない気がするけど、これがキョンの生活スタイルなのかもなあ、と思いながら毎日を過ごしていた。

ある日、帰ってきたキョンを見て驚いた。白い毛の部分にマジックで落書きがしてあったからだ。濡れたタオルで拭いても落ちなかったから多分油性だったと思う。どう考えてもいたずらだった。
いたずらはその後何回も続いた。人懐っこいキョンは、知らない人でも警戒せずにすぐ寝転がって遊んでもらおうとするところがあった。だからいたずらしやすかったんだろう。これ以上外に出すとまたいたずらされると思い、その日から外に出たがるキョンを無理やり中に押し込みながら登校する日々が始まった。

キョンのストレスは日に日に増大していった。大きな声で鳴くようになり、トイレの場所を守らなくなった。なるべくストレスを減らそうと一緒に遊んだりしたけれど、外の魅力には勝てず、キョンは長い声でニャーニャー鳴き続けた。そしてある日とうとう、ドアを開けた瞬間を狙って、キョンが弾丸みたいな速さで外に飛び出していってしまった。

キョンはその日帰ってこなかった。マンションの敷地内から出ないと思っていたけど、私の知らないところではこっそり敷地外にも出ていて、今回は敷地外に行ってしまったのかもしれない。実はうち以外に別邸があって、そっちに行っているのかもしれない。いたずらされていたらどうしよう。というか、交通事故に合っていたら? もう死んでるかもしれない。なんで外になんか出してしまったんだろう。通学途中、学校帰り、私はキョンを探した。探したけれど、全然見つからなかった。

4日くらいして、キョンはちゃんと生きて帰ってきた。

安心したのもつかの間、キョンはやっぱり落書きされていて、おまけに歩き方が変になっていた。埃っぽかったので風呂に入れて(思えばキョンは猫のくせに風呂もあまり嫌がらなかった)病院に連れて行った。
キョンは、後ろ脚の関節が外れてしまっていたようだった。何かにぶつかったか、蹴られたりしたか、着地に失敗したか、とにかく何らかの衝撃を脚に受けたようです、入院して安静にしたほうが良いでしょう、とお医者さんに言われた。

私は、いたずらをした犯人のせいなんじゃないか、と思った。姿は見えないけれど、油性ペンで猫に落書きをする犯人から、私にはとても理解のできない悪意を感じた。猫に落書きして何が楽しいんだろう。

脚をけがしてから、前くらいの勢いをもって外に出たがるようなことはなくなった。その代わりに、キョンはどんどんデカくなっていった。ちょっとした小型犬くらいだったら余裕で勝てるくらいの貫録が出てきて、猫なんだか犬なんだかよくわからなくなっていった。


そしてある日唐突に亡くなってしまった。


心臓肥大の原因は今でもよくわかっていないらしい。発症してから数年は無症状なので、私たちは気付くことができず、症状が出始めて初めて気付いて、もうその頃には後ろ脚の麻痺が始まっていた。要はもうほぼ手遅れだった。


いろいろ思うところはあるけれど、最終的にはいつも「キョンは幸せだったのかな」と言うところに落ち着く。うちみたいなところじゃなくて、もっと広い、庭とかのある一軒家にもらわれていれば、もっと長生きできたんじゃないかとか、幸せだったんじゃないか、とか。いたずらされることもなければ、脚をけがすることもなかったんじゃないか、とか。


この度、盲導犬が刺されたというニュースを受けて、こういうようなことを思い出しておりました。