社内備品とうなぎパイ

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キツネと大切なもの

頭がフワフワとしていて、まるで夢の中にいるようだと思う。私は多分今現実世界で文字を打っていて、そしてとてつもなく眠い。やらなくてはいけないことが山積みだった気がするけど、山になって積まれてしまうようなことなど取るに足らない。本当に大切なことはいつだって嵐のごとくやってきて、山のように積まれた事案を吹き飛ばしていくのだ。


本当に大切なものは目には見えないんだよ、といったのは星の王子様に出てくるキツネだ。目には見えない大切なものを私たちはどうやって守っていけば良いのだろう。なくしたことにすらすぐ気づけないようなものを果たして大切なものと呼べるのだろうか。それとも目には見えないだけですげえ大きな音が出てたりバイブレーションしてたりするの? 見えないけどあっちから音がするよ! みたいな。
目には見えない大切なものをなぜか他人と共有したくて、私たちは自分以外の人たちとコミュニケーションを図る。それは話すことだったり書くことだったり何かを創り出すことだったりするんだけど、正直私はうまく受け取れたこともうまく受け取ってもらえたこともないような気がする。まあ目に見えないんだからしょうがないな。


言葉なんかおぼえるんじゃなかった、といったのは詩人の田村隆一だ。言葉をおぼえてしまったせいで涙に意味を与えてしまう。不満足なソクラテスでありたくないという意味かな? というのはちょっと違うかもしれないけど、言葉を覚えたせいで目に見えないものでも何にでも意味を見出すことができてしまえるこの状況は確かにたまにダルい。私はこの目には見えない大切なものを、これこれこういうことがあって大切だと思っています。そうだね、っていう人もいれば、違うだろ、っていう人もいる。言葉は人を分断してまとめあげる。いやバベルの塔とかそういう話ではなくて。言葉なんかおぼえなければ、もっと人は個々としていたんじゃないかと思うんだよね。


大切なことは目に見えなくて、嵐のようにやってきて私の周りの積もり積もった山々を吹き飛ばしてくれる。言葉をもって意味を与えることで、私は大切なものを大切なものと認識することができる。
頭がフワフワしていて夢の中にいるようだけれどここは確かに会社で、昼休みで、午後からまた仕事をしなくてはならない。大切なものは目には見えない。目に見える売上データも上司評価も目の前の先輩もスケジュール表も大切なものではない。目に見えるものの向こう側に、大切にしなければならないものがある。多分。